三陸産のわかめを中心に、海藻類の加工などを手掛けている石巻の「富士國物産」。東日本大震災によるダメージを乗り越え、時代のニーズに合わせて、さまざまな工夫を凝らした同社の商品や、これまでの軌跡について紹介します。
国産わかめの約7割が生産される三陸の海
日々の食卓に身近なわかめですが、実は国産の約7割が、岩手と宮城の両県に面する三陸沿岸で養殖されたもの。黒潮と親潮が交わり、森林で蓄えられた豊富な栄養が注ぎ込まれる海で育つわかめは肉厚で、爽やかな磯の香りを楽しめるのが特徴です。
その中でも特に三陸南部の石巻市北上町十三浜は、わかめの一大養殖地として有名です。今回は石巻で三陸産のわかめを中心に、原料にこだわって商品を展開している、富士國物産株式会社の営業部長・鈴木徹（すずき とおる）さんに話を伺いました。
生産者と信頼を築き、上質な原料を仕入れる「富士國物産」
1967年に創業された「富士國物産株式会社」では三陸産を中心に、国産の旬の原料にこだわり、湯通し塩蔵わかめや乾燥カットわかめなどを製造しています。鈴木さんは「特に石巻のわかめは、肉厚であるものの、もっと北のものと比べて食べやすいと評判です」と話しました。
同社で取り扱うわかめは、市場での入札のほかに、生産者から直接仕入れているものもあるといいます。「昔から生産者とは付き合いがあり、会社の目の前の表浜で『浜買い』をしています」。浜買いとは、生産者からわかめを直接仕入れること。市場に流通するものとは異なり、わかめを茎と葉に分ける芯取りや異物除去などをする半製品のものです。それにより同社は市場より安価で仕入れることができる他、生産者にとっても大きなメリットがあります。「生産者の人手不足などにより、繁忙期に収穫されたわかめの一部は処理作業が追いつかず、そのまま破棄されてしまいます。そのわかめを仕入れることで、少しでも生産者をサポートしたいと思っています」。
現代のライフスタイルに合った商品づくりへ転換
東日本大震災では、石巻同様、富士國物産も大きな被害に遭いました。工場は津波で流され、建物内にいた経営陣はたまたま隣接していた学習塾の2階に移動することができ、難を逃れたといいます。「取締役を務めている私の姉は当時その場におり、『この世の終わりだ』といっていました。津波が引いた後の現地は周囲も含めて建物が全て流され、まるで湖みたいでしたね」と鈴木さんは振り返りました。
その後、風評被害などに悩まされながらも、同社はこれまで培ってきたノウハウを活用し、より現代のライフスタイルに合わせた商品づくりへ転換しました。例えば、その一つが「乾燥カットわかめ」。料理に手を掛けられない人たちや個食が多くなったことに目を付け、同社の独自製法で作られています。「大手メーカーとは異なり、我々は大量生産できません。その分、質にこだわり、手作業と機械の良さを組み合わせて商品を作っています」。
さらに食品衛生管理規格であるHACCP（ハサップ）認証取得に向けた取り組みを進めるなど、より多くの人に三陸産わかめのおいしさを届けるために生産体制を整備しています。
シャキシャキ食感が全国で評判「理由あり湯通し塩蔵元付茎わかめ」
生産者から浜買いしている商品の一つが、こちら。三陸の栄養豊富な海で育った茎わかめのうち、繁忙期に処理作業が間に合わなかった規格外のものが詰められています。規格外といっても、豊かな風味や歯ごたえはそのまま。肉厚でシャキシャキとした食感を楽しめます。「関東や関西方面のお客さまにも人気ですね」という鈴木さんのおすすめレシピはピクルス。「酢に漬けておくだけで、歯ごたえのある、おいしいピクルスになりますよ」。また食物繊維をはじめ、生活習慣病予防の効果が期待されるフコイダン、アルギン酸などが豊富に含まれており、その味わいはもちろん、からだにも嬉しい食材です。
▼魚ポチ商品掲載ページ
湯通し塩蔵茎ワカメ(元付)【訳アリ】
※欠品などにより掲載がない場合がございます。
昔から産地で愛される「茎わかめ漬物（しば漬け）」
鈴木さんが「このあたりの地域では昔から食べられています」という、わかめのしば漬け。三陸産の茎わかめを梅酢などを使って、しば漬け風味に。コリコリとした食感で、さっぱりとした味わいがやみつきになり、ごはんのお供や酒の肴にぴったりです。
▼魚ポチ商品掲載ページ
茎ワカメ【柴漬け】100g
※欠品などにより掲載がない場合がございます。
難局を乗り越えるために、地域一丸となって
円安やエネルギーの高騰、漁獲量不足など、水産業にとって厳しい局面にある昨今。それでも鈴木さんは「無理することなく、しかし、一方で新商品をどんどん作っていきたいですね」と前を向いています。そして、その際にはわかめを中心に据えながら、同社の高い乾燥技術で野菜など他分野のものを取り扱うことも視野に入れているといいます。
さらに、この難局を乗り越えるためには「地域の各メーカーが一体となるべき」と力を込めました。「水産で栄えたまちだからこそ、これまではあまり手を組むことがありませんでした。しかし、これからは技術や知識を共有し、みんなで乗り越えていかなければいけません。実際にそういった動きも進めています」と鈴木さん。富士國物産は三陸のわかめ生産者や、地域のメーカーと共に、海の恵みをこれからも全国へ届け続けます。