【三陸・常磐の水産加工品特集2022】伝統を大切に、カレイの新しい味わいに挑戦。「宮古マルエイ」

漁船

「東日本唯一の干しカレイ専門店」として、三陸や北海道のカレイを原料にした商品を展開する「宮古マルエイ」。今回は同社のこれまでの歩みや、伝統の技で手作りされる逸品などを紹介します。

 

豊富な魚介が水揚げされる、天然の良港・宮古港

 

岩手県のほぼ中央、本州最東端に位置する宮古市。1615年に開港した天然の良港・宮古港には豊富な魚介が水揚げされ、漁業の町として栄えてきました。

しかし、2011年の東日本大震災で宮古は甚大な被害を受け、水揚げ量が減少するなど、水産業は大きく落ち込みました。それでも地域の水産業者は2019年にトラウトサーモンの海面養殖に取り組み、2020年には「宮古トラウトサーモン」として初出荷するなど、水産業の活性化に向けて、さまざまなチャレンジを続けています。

今回は精力的に活動する水産業者の中の一社で、多彩なアイデアで干しカレイを使った商品を手掛ける「有限会社宮古マルエイ」の大濱千佐喜(おおはま ちさき)さんに話を伺いました。

宮古港
宮古港

東日本唯一の干しカレイ専門店「宮古マルエイ」

 

「宮古マルエイ」は、宮古市で主にイカの加工を手掛けていた株式会社大濱正商店と、当時輸入かれいの干物を手掛けていた島根県浜田市の株式会社マルエイにより、1994年に設立。カレイの加工品の製造、販売を行っています。

同社の立地は、北日本の主要なカレイ産地に近く、乾いた冷たい風が吹くため、干物づくりに最適。早池峰山系の地下水にも恵まれており、大濱さんは「水質を分析した専門家にもいい水ですねと評価されました。軟水で雑味が入りにくいため、素材の味を活かしたい干物にぴったりです」と話しました。この水をふんだんに使って丁寧に下処理された干物は、くさみが抑えられ、中まで均等に味が入り、塩角のないまろやかな味に仕上がります。

 

国産カレイ
商品の原料となる国産カレイ

 

2011年の震災で、同社は凍結設備配管の破損などの被害を受け、さらに物流が停止し、何カ月も出荷できない状態に。そのような状況の中でも、大濱さんのお母様で取締役の晴美(はれみ)さんは何とか前を向き、商談会や講演会などに積極的に足を運んでいました。

しかし、2016年の台風10号で再び被災。工場は1.3mほどの高さまで浸水し、設備機器が損壊しました。その状況を見て、当時東京のメッキ会社の品質管理部門で働いていた大濱さんは帰郷することを決断。廃業を考えていた両親を半年ほどかけて説得し、正式に入社しました。

入社後、大濱さんは前職で培った品質管理や分析のスキルを活かし、食品衛生管理規格のHACCP(ハサップ)に準じた衛生管理実施工場認定を取得するなど、生産現場や受注システムの整備に注力。さらに「会社の顔が見えるように」とブランディングにも取り組んでいます。

 

大濱 千佐喜さん
大濱 千佐喜さん

今回は量販店の要望から生まれたほっき貝の加工品2点と、素材と使いやすさを追求した蟹味噌を紹介します。

 

地域内外の人たちとコラボ商品を積極的に開発

 

宮古マルエイでは近年、県内外のメーカーや店舗などとコラボレーションした商品の開発を進めています。その理由について大濱さんは「若い世代が魚を食べるきっかけになる商品を作りたかったんです」と明かしました。「骨を取るのが大変、可食部が少ない、内蔵が苦いなど、魚を食べない理由は人それぞれです。しかし、味が嫌いという人はほとんどいないので、それらの課題を解決して、一度口にしてもらえる商品を目指しています」。

 

かれいの魚拓せんべい
かれいの魚拓せんべい

 

その一つが、干しカレイが一匹丸ごと入った「かれいの魚拓せんべい」。愛知県の煎餅専門店「香味庵本店」とコラボレーションした一品です。「インパクトのある見た目なので、道の駅などたくさんの人が訪れる場所に置き、一人でも多くの方に味わってほしいですね」

その他にもカレイをおろすことができるキットなど、アイデアあふれる商品がそろう同社。こうした商品の味やパッケージは、従業員のみなさんと決めることも多いといいます。「新しい商品でも、うちならではの手作感のよさを伝えたいと思っています。できること、できないことありますが、こうしたチャレンジは続けていきたいですね」。そう大濱さんは意欲を見せました。

 

※魚ポチでは「かれいの魚拓せんべい」の掲載はございません。

 

 

宮古流で丸々一匹味わえる「干しカレイ(サメカレイ)」

 

国産7種類のカレイを取り扱う宮古マルエイの中で、宮古ならではの食べ方を堪能できるものの一つが、「サメカレイ」。「他の地域では皮を剥いて食べることがほとんどですが、宮古では頭も皮も丸々食べるんですよ」と大濱さん。その見た目とは裏腹に味わいは格別で、鮮度が良ければ刺身でも食べられるという身には滴るほど脂がのり、その強い甘味が堪能できます。

サメカレイ
サメカレイ

 

宮古の定番は皮ごと焼く「塩焼き」。フライパンにシートを敷き、皮を下にして両面焼くと、皮はカリッと香ばしく、身はジュワッとジューシーに。大濱さんは「まるで、とんかつみたい!という人もいます」と語りました。

 

サメカレイの塩焼き
サメカレイの塩焼き

 

また、頭は磯の爽やかな風味が感じられる「汐炊き」がおすすめ。頭と大根、水を入れてグツグツ煮るだけで、出汁が染み出し、旨味たっぷりの汁物に。その他にも唐揚げやフライなどにすれば、あっさりとした食感で、その旨味を楽しめます。

▼魚ポチ商品掲載ページ
冷凍干しサメガレイ三陸産 カット済【宮古マルエイ】
※欠品などにより掲載がない場合がございます。

 

受け継がれてきたおいしさを、未来へつなぐために

 

時代のニーズに合わせ、さまざまな商品を展開している同社ですが、それらの動きについて「これまでの商品や味を変えないために挑戦しています」と大濱さんは話しました。「会社を大きくしたいという想いはありません。これまでの商品を愛してくれている人、そして一人でも多くの人に喜んでほしいという想いで、
これからも地元で手作りを大切にしていきたいですね」。

最後に魚ポチをご覧の皆さんへメッセージをいただきました。「カレイを取り扱ったことがない方や新メニューを考案中の方に対して、何ができるか常に模索しています。ぜひ、一度試していただき、さまざまな意見をフィードバックしてください」。会社に受け継がれてきた味やノウハウを守り、未来へつなげるために。大濱さんの挑戦は続きます。

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