「やんばるの魚」を新鮮なまま運ぶ!沖縄・国頭漁協×高砂熱学が挑む”超高品質鮮魚流通システム”(前編)

写真はシャーベットアイスに浸かった、沖縄を代表する魚種“クチナジ”

意外に思われるかもしれませんが、魚ポチでは南方系の魚が人気です。従来の卸売市場ではあまり流通してこなかったレアな魚はこだわりの強い飲食店さまによる争奪戦となり、毎日15時半に魚ポチがオープンし掲載されると、早々に売り切れてしまうこともしばしばです。そのような背景から、魚ポチではかねてより沖縄県の魚を販売したいと考えていましたが、その地理的な距離の遠さから鮮度の良い魚を仕入れることが難しく、大きな課題でした。

仕入先を模索するなかで出会ったのが沖縄県国頭(くにがみ)村の国頭漁業協同組合(以下、国頭漁協)です。”国頭の魚は鮮度が良くない”というイメージと評価に危機感を持っていた国頭漁協では、水産物の高鮮度流通に取り組む高砂熱学工業株式会社(以下、高砂熱学)と協働し、同社の海水シャーベットアイス製氷機「SIS-HF®」を用いて、水揚げから流通まで一貫した温度管理による魚の鮮度保持を実現しました。

今回はこの“超高品質鮮魚流通システム”の取り組みについてご紹介いたします。

※水産物の高鮮度流通を実現する高砂熱学製の海水シャーベットアイス製造装置「SIS-HF®(スーパー アイス システム ハイ フレッシュネス)」。SIS-HF®は氷蓄熱空調システムの技術を応用して開発され、最大でも粒径0.05mm程度というきめ細かく滑らかな氷は、魚体を傷つけず、急速・均一に冷却することが可能。特筆すべきはその温度であり、-1℃に保たれたシャーベットアイスは、魚をチルド状態のまま長時間維持させることができる。その氷濃度は約50%と、従来型のかき取り方式シャーベットアイスの約2倍に当たり、氷蔵保存時間も約2倍になるため物流範囲を拡大できる。
高砂熱学工業株式会社 公式サイト

沖縄本島北部、世界自然遺産の森から栄養が流れ込む豊かな漁場。でも…

国頭村は沖縄本島の最北端に位置しています。周辺の海域では世界自然遺産にも登録された「やんばるの森」から流れ込む栄養が豊かな漁場を形成し、タカサゴ(グルクン)やグルクマ、ウメイロ、ツムブリ、キハダマグロ、スマガツオなど南方らしい魚種が種類豊富に水揚げされています。



東シナ海側の辺土名(へんとな)漁港と近隣の海岸。さすがは沖縄、真っ青で透明度が高くとてもきれいな海です!

しかし、豊かな漁場で獲られた良質な魚であっても、空輸便の出る那覇までは約100km(車で2時間)と遠く、首都圏へ送るにはさらに+1日かかるため、その間に魚の鮮度は落ちてしまいます。首都圏では見慣れない色鮮やかな魚は”美味しそう”なイメージに結び付きづらいこともあって、”国頭の魚=美味しくない”という評価に繋がっていました。結果として魚価の向上が見込めず、漁師の収入も期待できない状況だったため、漁業の担い手不足も深刻な課題になっていました。

異業種間の垣根を越えた挑戦!
“国頭漁協の鮮魚処理技術×高砂熱学の製氷技術”で魚の鮮度を長持ちさせる


国頭漁協 村田組合長

そんな状況を打破すべく、国頭漁協は、異業種である高砂熱学とタッグを組み、魚の鮮度保持における課題解決に乗り出しました。

取り組みを主導する村田組合長は、魚の鮮度保持において最も重要な要素の一つである、水揚げ後の処理に着目します。そして、漁獲した魚を水揚げ後すぐに活締め・脱血などの鮮度処理を施したのち、高砂熱学製の製氷機で作り出したシャーベットアイスに浸漬し急速冷却し、そのまま丸1日冷やし込んでから出荷するという体制を組み上げました。

これにより魚は芯までしっかりと冷えて輸送中の温度上昇も抑制され、鮮度を落とすことなく首都圏への流通が可能になりました。




魚ポチでも大人気、天然のマルコバン!水揚げ後すぐ、船上ですばやく活締め、血抜き、冷やし込み。漁業を知り尽くした魚ポチバイヤーも手放しで絶賛する鮮度処理です!

シャーベットアイスによる冷却は、通常の海水氷仕立てに比べて3〜4日は長く(最大1週間!)獲れたての鮮度を保つことができるため、魚ポチで国頭の魚を購入したお客様から「魚のもちが良いので、食品ロスが減らせる」と高評価をいただいています。リピート購入も多く、掲載するとすぐに売り切れる人気産地となりました。(冷却の仕組みについて詳しくは後編で!)

また、鮮度もちの良さから魚の出荷タイミングをコントロールできるため、日によって出荷する魚種や量を調整でき、安定的な供給も可能になりました。台風により船が出せなくなることの多い夏場でも、高鮮度の魚をお届けできます。朝獲れの魚を無理に急いで出荷する必要もないため、漁師や漁協職員の労働環境改善にもつながりました。

国頭では鮮度保持の努力が実を結び、徐々に魚の価値向上が始まっています。最近では以前は値が付かなかった魚が正当に評価された結果、5倍の魚価向上を実現した魚種もあるほど!魚価の向上は、漁師の収入が安定し漁業従事者の増加が期待できることに加えて、これまで時には雑に扱っていた水産資源をていねいに扱うことにもなり、水産資源の持続性、すなわちSDGsにもつながる、水産産業にとってとても重要なことなのです!




魚ポチへの出荷現場も見せていただきました。出荷直前まで芯まで冷やし込まれた魚を、脱水したシャーベットアイスでしっかりと包んで箱詰め。長時間の輸送に耐えられるよう氷の量も計算されています。ていねいな仕事に感動!

漁業関係者の意識向上をサポート

さらに、国頭漁協では漁協ブランド向上を目指し、漁師による鮮度処理作業のばらつきを少しでも減らすため、定期的に鮮度処理についての勉強会や衛生講習会等を行い、漁師・漁協職員が一体となって魚の取り扱いの意識向上、改善を進めています


この日は魚ポチバイヤーから魚の鮮度保持や飲食店のニーズに関する講習会を行いました。漁師の方から質問が飛び交い、白熱した会となりました!

シャーベットアイスが実現する鮮度保持の仕組みを徹底解説!後編へつづく

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