「ふくしま常磐もの」を知る、出張レポート <相馬編>

セリの様子

福島出張レポート第二弾は相馬編。福島県の北部、相馬市の相馬原釜地方卸売市場(松川浦漁港)は震災による大津波で、漁港にあったすべての施設が被害を受け、2016年9月に竣工・再開。水揚げからセリ、出荷作業まで相馬原釜の1日を視察しました。

相馬原釜地方卸売市場

相馬原釜地方卸売市場

朝7時。市場に着くと、夜中に出港した船が次々と帰ってきました。獲れたばかりの魚はセリの順番を待つため、岸壁から市場へ運ばれていきます。水揚げを終えた一人の漁師さんは、慣れた手つきで網の手入れを丁寧に行っていました。「30年以上漁師をやっている。震災前は週5日ほど海に出ていたけど、いまは週2〜3日程度。」と言います。いわき編の記事にあるように、福島の漁業は試験操業*のため、相馬原釜も漁法ごとに出漁のスケジュールが決められています。わたしたちが見学した日は、流し網漁、刺し網漁、タコかご漁、シラス漁、釣りヒラメ。また別の日では、底びき網漁やホッキ貝漁、はえ縄漁などの出漁もあります。震災前より水揚げ量は減っているものの、相馬原釜ではさまざまな漁法により多種多様な魚が水揚げされます。

獲れたばかりの魚

獲れたばかりの魚

獲れたばかりの魚

獲れたばかりの魚

7時半。競り人の威勢の良い声が響き、セリがはじまりました。スタートは流し網漁の魚から。スズキやマダイ、サゴシ(サワラ)などが並べられています。さすが、美味しさの証である「常磐(じょうばん)もの」は、目が輝いていて小顔、魚体がきれい。肉厚で見るからに美味しそうです。と、見ているあいだに流し網漁のセリが終わり、続いて刺し網漁、タコかご漁のセリがはじまりました。セリは魚の鮮度を落とさないため、とにかく進行が早く、独特なリズム感があります。

セリの様子

相馬原釜では、古くからカゴを使ったセリが行われています。カゴを使うのは衛生面を考えてのことで、お母さんたちが魚を選別し、素早くきれいにカゴに並べていきます。お母さんは本当に仕事が早く、キビキビと働く姿が印象的でした。一つ一つの早く丁寧な作業によって鮮度が保たれ、常磐ものブランドの高い評価が守られているのだと気づかされます。

セリ場のお母さん

「ハモ見てみ、ハモ」とお母さんたちに呼ばれて活魚槽を覗くと、大きく丸々太ったアナゴが。「あれ、アナゴですかね?」と言うと「いや、ハモ」とのこと。どう見てもハモではないよなぁ……。まじまじと見てさらに聞いてみると、相馬ではアナゴのことをハモと呼ぶことが分かりました。「相馬のハモはね、脂のうま味が断然ちがうのよ。」と、お母さんたちは力強く言います。艶やかで厚みがあり、とても立派なアナゴです。ちなみに、福島ではユメカサゴをノドグロと呼ぶそう(アカムツ=ノドグロが一般的なので、ちょっとややこしいですが)。郷土の方言を少し知ることができました。

ハモと呼ばれるアナゴ

午後もセリが続きます。
12時。シラス漁の帰港を待つお母さんたちが集まり、午後の市場も笑顔と 活気に 溢れていました。帰ってきたシラス漁の船には、3~4人のお父さんたちが乗っており、シラスがカゴいっぱいに入っています。お母さんたちは水揚げを手伝い、市場へと運びます。相馬原釜では、魚を獲ってくるのはお父さん、魚を市場へ出すのはお母さんとなっており、漁は家族共同 の仕事です。セリ場には300カゴほどのシラスが一挙に並べられ、セリがはじまります。

シラス漁船

シラスかご

13時。釣りヒラメ漁の船が帰港。釣りヒラメ漁は、小舟で一人で操縦している漁師さんが多く、独自の釣法が一人一人の漁師さんにあるそうです。釣法は企業秘密で、漁師さんだけが知っています。ここでもタモ網を持ったお母さんたちが、ヒラメを船から活魚槽へと運ぶ家族のバトンリレーを見ることができました。

タモ網を持ったお母さん

ヒラメ漁船

1日のセリが終了しました。買受人さんはすべての買い付けが終わると、次は仕分けや梱包のため、市場と隣接している共同集配施設へと魚を運びます。魚ポチが仕入れをしている相馬の買受人さん、飯塚商店の飯塚哲生代表が目利きをし、競り落とした魚たちもここに集まります。

締め作業場

本日はホウボウやイシモチ、クロメバル、サゴシ(サワラ)、ヒラメ、マダイ、スズキなど色々と買い付け。哲夫さんは梱包する前に、野締めでも頭と尻尾に包丁を入れて、血抜き処理をしていました。締めた魚にさらに血抜き処理をすることで、より高い鮮度をキープできます。魚ポチに掲載している実物の写真は、ここで撮影されます。

締め作業

締め作業

「魚ポチは、どんな魚が飲食店さんに人気なのか、フィードバックがあるから嬉しい、励みになる。」

魚ポチ飲食店さんに人気の500-700gの大きなホウボウは、刺し網で水揚げされたもので相馬原釜ではよくある定番魚。しかし都内ではこのサイズはめずらしく、刺身などに使い勝手がいいと好評。また、哲夫さんはちょっと変わり種の魚も届けてくれます。たとえば、ヒラツメガニ。

「ヒラツメガニは、ワタリガニに負けないくらい本当にいい出汁がでる。味噌汁でもカレーライスにしてもおすすめ。」と太鼓判。カニのなかでも、ヒラツメガニはリーズナブルで美味しく、魚ポチでも売れ筋です。

ホウボウ

18時半。保冷車に積まれて都内の卸売市場へ運ばれていきます。魚ポチが買い付けた魚たちは大田市場を経由し、お店に届くことになるのです。

梱包作業

魚ポチへ

いわきの視察と同じく、相馬原釜の人々もまた本格的な操業を目指し、前を向いていました。多種多様で美味しい「常磐もの」がもっと広がるように、魚ポチでもできる限り多くの魚を掲載しています。飲食店のみなさま、開催中のふくしま常磐ものフェア、ぜひお試しください!

※試験操業とは福島県の沿岸漁業及び底びき網漁業は、原子力発電所事故の影響により操業自粛を余儀なくされています。このような中、福島県による4万件を超えるモニタリングの結果から安全が確認されている魚種もあります。このような魚種を対象に、福島県の漁業再開に向けた基礎情報 を得るために、小規模な操業と販売により出荷先での評価を調査する「試験操業」を行っています。販売される漁獲物は福島県漁連が中心となり、放射性物質の検査を行っています。

水産品の仕入れなら
飲食店専門ネット鮮魚仕入れ「魚ポチ」