現地での買付から品質を追求する、絶品の“子持ちししゃも”「ヤマイシ」

国内では唯一のカナダ産カラフトシシャモの加工業者として、現地での買付から大洗での加工まで、徹底的に品質にこだわっているヤマイシ。代表取締役の関根さんは毎年カナダに滞在し、生産者との交渉から原料の仕入れ・選別まで自ら行っています。今回はその商品づくりにかける並々ならぬ想いや、魚ポチで取り扱っている同社のししゃもの魅力について伺いました。

カナダ産カラフトシシャモの国内唯一の加工業者として

茨城県・大洗地区に本社工場を構える株式会社ヤマイシは、現在、カナダ産カラフトシシャモの加工を行っている国内唯一の水産加工会社です。
「元々、江戸時代に呉服店から始めて、庄屋や酒屋など、代々、商いをしてきた家系なんですよ」と話すのは、4代目で代表取締役の関根志昌さん。

株式会社ヤマイシは、1930年から関根さんの曾祖母が地元の鮮魚を取り扱い始め、1950年代から大洗で水揚げされるシラスやイワシなどの加工を行うように。1970年代後半からは、カラフトシシャモの加工に力を入れるようになりました。
「商売もそうですが、時代や環境にあわせてさまざまなことに取り組んできたようです」という関根さん。その柔軟性はご自身にも引き継がれています。

関根さんは同社で勤務を始めてから、それまで市場だけだった取引先をスーパーマーケットにも拡大。自ら店頭に立って販売を行い、売上を大幅に伸ばしました。「当初はお客さんもバイヤーも『ししゃもなんて、どれも同じでしょ』といった感じで苦労しましたが、徐々にその味が認められ、鮮魚部門の中でも売上はトップクラスになりました」と関根さん。また、店舗の店長ともコミュニケーションを取ることで、市場のニーズを把握するとともに知識や実績を積み重ね、多方面からの信頼を築き上げました。

「質に全振り」を体現する関根さん

「うち（ヤマイシ）は質に全振りしています！」と断言する関根さんのししゃもに対するこだわりは、並大抵のものではありません。関根さんはずっと大切にしているという先々代にあたる祖父と先代の父親の言葉を教えてくれました。「おじいちゃんからは『利は元にあり』と教わりました。良い原料じゃないと利益は作れない。原料や鮮度の管理を徹底するということです。そして親父からは『うちらは加工屋なんだから、うまいものを作れなかったら加工屋なんかやっちゃダメだろう』と。この2つの言葉を胸に原料の調達から加工まで最大限努力しています」。

関根さんは例年6月下旬頃から1ヶ月半ほど、カナダの最東端ニューファンドランド島に滞在し、現地での買付から選別、運送の管理まで20年以上にわたって行ってきました。「原料の仕入れを現地任せにすることはありません」と関根さん。原料の選別など、長い時には1日15時間以上、現地の工場で働くこともあるそうです。「水は冷たいし、もちろん大変な作業ですが、実際に自分の目で確かめているので、島で一番良い原料を手に入れることができています」。こうした活動を身を持って続けることで、関根さんは現地の漁師や生産者と信頼関係を築いてきました。「私の信条の一つは、本当の意味で全員がWin-Winになることです。原料を買い叩くことはしませんし、その分、質の良いものをしっかり仕入れています。そのためにも長い年月をかけて信頼関係を築いていきたいと思っています」。

卵の量と味わいが特徴のカナダ産カラフトシシャモ

関根さんがそれほどまでにカナダ産のカラフトシシャモにこだわる理由は、この産地のししゃもならではの特徴に惹かれてのこと。ニューファンドランド島の海域はラブラドール寒流とメキシコ湾流が交わる、世界三大漁場の一つ。カラフトシシャモは他に、ノルウェー産、アイスランド産のものが有名ですが、その中でカナダ産は、身がムチムチとしていて卵をたっぷり蓄えていることが特徴でです。「皮目が薄く、パツパツとしていて、プツッと針を刺したら破けてしまいそうなほど卵が入っています」と関根さん。そのために取り扱いが難しく、出荷時はもちろん、輸入したものも関根さんがチェックし、質の良いものだけを使用しています。

こうして厳重に品質をチェックしたししゃもは、大洗の工場で加工されます。一匹一匹、均一の感覚になるよう手作業で丁寧に串打ちし、9度以下の低温で最低でも13時間以上を掛けて、じっくり、ゆっくりと乾燥。この代々伝わる手法に忠実に手間暇を掛けることで、昔ながらの味わいに仕上げています。

ヤマイシのカラフトシシャモは、卵の量の多さも然る事ながら、他の産地のものに比べて食感がプチプチとしていて、甘味も十分。また、苦味のもととなる“えぐみ”の量が少ないため、子どもでも頭から丸かじりして、そのおいしさを堪能することができます。素焼きはもちろん、フライにしてもあっさりとした脂の旨みが軽やかなおいしさで何匹でも味わうことができます。