震災後12年を経て振り返る福島の歩み。常磐ものの魅力を再発見する「発見!ふくしまフェア」開催

福島県沖は親潮と黒潮がぶつかり合う潮目の海。古くから漁獲量・魚種共に豊富な漁場であり、その豊かな海で水揚げされた魚はよく太って味がよく、「常磐もの」と呼ばれて高い評価を受けてきました。

2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県の漁業は、6年間の試験操業を経て2021年より本格操業への移行期間に入りました。しかし、今年8月のALPS処理水放出を受けて、再び苦境に立たされています。

魚ポチでは2019年より福島県の鮮魚の取り扱いを開始し、その後現在に至るまで継続して販売を続け、福島県の漁業を応援してまいりました。今回の「発見!ふくしまフェア」では、飲食店の皆さまにもっと福島の魚の魅力を知っていただきたいと思い、魚ポチで取り扱う福島の魚や産地の状況、安全・安心の取り組みなどについて、改めてお伝えしてまいります。

 

6年間の試験操業を終え、本格操業へ

福島県は県内の漁業再開に向けた調査を行うため、2013年よりモニタリング検査で安全が確認された魚種を対象に小規模な操業と販売を行う「試験操業」を続けてきました。

相馬といわきの2か所に放射性物質の検査機器を設置し、各市場の水揚げ日ごとに検査を実施。国の定める基準値の半分という厳しい独自基準を設けて安全・安心な海産物を出荷してきました。現在では一部を除いて震災前と同様の海域が利用可能となり、震災前に行っていたほぼ全ての漁法が操業可能となっています。

これらの取り組みが評価され、出荷先都道府県数が震災前とほぼ同様に回復したことから、2021年3月をもって試験操業はその役目を終え、終了。2021年4月より本格操業へ向けての移行期間へと移りました。しかし、水揚量は震災前と比較していまだ低い水準にあり、水揚量の増加と流通・消費の拡大が課題となっています。


※2019年時の放射性物質検査施設視察の様子

 

産地仲買人さんに聞きました!「常磐もの」の魅力と復興の歩み

現在魚ポチで販売している福島県産の鮮魚は、主に福島県の相馬原釜(松川浦漁港)で仲卸業を営む飯塚商店さんから仕入れています。今回は代表の飯塚 哲生さんに「常磐もの」の魅力や、これまでの復興への取り組みについて伺いました。

飯塚 哲生さん(写真左)
福島県相馬市・原釜を拠点として水産仲卸業を営む、飯塚商店の三代目。
原釜港で水揚げされる魚介類や鮮魚を出荷するほか、タコのボイル加工、アンコウの切身加工などの一次加工、販売も手掛ける。震災後、積極的に産地からの発信を行い、相馬市の漁業復興に取り組んでいる。

※震災前までは相馬市に原釜漁港という港があり、常磐もの=原釜産という認識が広く浸透していました。しかし原釜地区は2011年の津波被害で消失しており、現在ではもともと養殖の海苔やアサリ等内海ものが水揚げされていた松川浦漁港で沖合漁業の操業も行われています。地元の方々は昔から親しんできた「原釜」という名前に愛着があり、今でもそう呼ばれているため、本記事でも同様の呼称で表記いたします。

 

ー 原釜ではどのような魚種が水揚げされますか。

原釜で水揚げされる魚種はだいたい200種類と言われますけれども、それくらい種類が豊富です。春夏秋冬で獲れるものが変わってくるのがこの浜の特徴です。

これから冬に向けてはズワイガニなんかが獲れますね。それにキンキ(キチジ)や、アンコウもいいですよね。丸々太っています。ヒラメは通年獲れますが、やはり「寒平目」と言われるように寒くなってくると美味しくなってきます。サワラは秋口から冬、12月くらいまで獲れるものが一番美味しくて、毎年魚ポチでも取り扱ってもらっています。

最近はトラフグや太刀魚なども水揚げされています。ここ3年ぐらいの新しい魚種なんですが、定着しているのか、かなり獲れています。トラフグは行政の方でもブランド化しようと動いているようです。

 

ー 魚ポチに送っていただく魚について、どのような点に気をつけておられますか。

もちろん、いい魚っていうのは大前提なんですが、飲食店さんが自分の目で見て買えるわけではないので、飯塚商店を信用して買っていただいていると思っています。飯塚商店の魚なら大丈夫と信頼してもらえるようなものを常に出していくように心がけています。

私も直接会っているわけではないので買ってくれているお客さんの顔を知っているわけではないですが、こういうお客さんに使ってもらえるのかなあとか、イメージしながら。魚ポチからのフィードバックはとても勉強になりますしありがたくて、顔が見えないけど見えているという感覚がすごくあります。

 

ー 原釜は2011年の震災による大津波で漁港にあったすべての施設が被害を受けました。その後、どのようにして復興に取り組んできたのでしょうか。

津波で流された施設など、ハードの面は建て直せば復旧できましたが、原子力発電所のことがやはり重くのしかかっていて、漁業者は「もう一度魚獲れるのかな」という不安と戦ってきました。漁師続けていいのか、魚屋続けていけるのかという不安がありましたね。

そのうち、放射性物質の検査体制が整ってきて、国の基準値の半分の値を独自に設定し、基準値を超えたものは絶対に出さない、検査をクリアしたものについては出していくという段階を踏みながら、徐々に出荷魚種を増やし、取り組みを進めてきました。

今は試験操業が終わり拡大操業という名前になって、試験操業時より操業エリアは増えたものの、震災前と比べて水揚げ量は30%に留まっています。これはデータ上そうなっていますが、漁の回数が震災前とは違うので比較対象として正確ではありません。底引き網漁はもともと福島、宮城、茨城、千葉の4県で操業していたけど、今は福島沖でしか漁をやってないので、そもそも100%には回復しない。そこは前提が違うので単純に比較はできません。

それでも我々仲買人の立場からすると、全国の取引先が震災前のように戻ったのは間違いないですね。注目されているぶん、むしろ増えてもいます。震災前は獲れなかったトラフグや太刀魚などの新しい魚種があることもあり、感覚的にはそういった取引先が増えたなという印象です。

 

ー では、風評払拭という意味では改善は進んでいるのでしょうか。ALPS処理水の放出により再び風評被害が起こるのではと懸念されていましたが、実際にはどうでしたか。

おかげさまで、かなり理解を得られていると思います。サカナバッカ(フーディソン運営の鮮魚店)でも福島フェアをやっていただいたり、行政も力を入れてくださっているので、非常に助かりました。

2011年の3.11からようやく復活してきていたところに処理水の放出があり、今度こそ本当に駄目なのではないかという感覚が、漁業者も市場関係者にもありました。どうなっちゃうのかなと先行きに不安がありましたが、蓋を開けてみたら真逆の反応で、本当にありがたかったです。

新聞などでも報道されていましたが、去年の同じ時期より浜値が上がったりすることもあり、地元は非常に活気付きました。仲買としては大変ですけど浜としては良かったなって。ありがたかったですし、良いニュースでした。皆さんの応援に感謝しています。

 

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