御前崎市の有名な水産品のひとつに『サワラ』があります。1年のなかで11月~3月は水揚げが多くなる時期。御前崎南駿河湾でも今、サワラの漁がはじまっています。
今回、実際にサワラ漁を見に行くため漁師歴40年の大澤洋一さんにお会いして、大澤さんの船「第一豊漁丸」に乗せていただきました。大澤さんは、地元・御前崎の港まちの漁師の家で生まれ育ち、若い頃からカツオ釣り船の船員として経験を備えられてきたベテラン漁師さん。30代に入ると、父の跡を継いで「第一豊漁丸」の船長に。家業の5代目漁師として御前崎市の漁業を支えています。
早朝5時。まだ暗いうちから餌の仕掛けの準備がはじまります。
「釣れなかったらごめんねぇ」やさしい笑顔でそう言いながら、手際よく針に餌をつけていきます。餌は30センチくらいある、目がキラキラした鮮度のいいサンマ。この大きさのサンマだと3kgほどあるサワラが食いつくそうです。
「サワラは食いしん坊だからね、どんな魚でも食べるよ。とくにイワシも大好物だよ、今はサンマが旬だからね」
そうしてサンマの魚体のなかに釣針フックを埋め込み、仕掛けをつくっていきます。
さて出発。本日は晴天、いい日和です。
漁法は曳き縄(ひきなわ)漁。船から複数の竿を出し、餌のついた釣り糸を竿に取り付け、ひき廻して行う漁法です。大澤さん、長年の経験のなかで備えた鋭い勘でサワラがいそうな場所へ向かい、さらに魚群探知機も見ながらその精度を高めていきます。
出発して約1時間。
「おや、掛かったかな」と竿を眺め、敏感に反応した大澤さん。魚が掛かると竿がしなるのですが、ん?さっきと変化あったかな…?と、素人のわたしには見分けがつきません。この目利きはやっぱり漁師さんのすごいところ。大澤さんはわずかな竿の角度も見逃しません。
巻き上げ機を使ってクルクルと巻き上げていきます。大澤さんが釣り糸を手でたぐり寄せ、その視線は釣り糸の先に。サワラはかかっているのか……。現場に緊張が走ります。
集中して先を見ていると、大きなサワラが……!サンマを口に加え、しっかり掛かっていました。
ここからは、よろこびにひたる間もなくスピード勝負です。釣れたサワラを棒かきを使ってひき上げると、頭をつかんで分厚いスポンジマットの上へ。ばたばたと動き回る魚を沈静させます。そして、脳天から締める処理をして、しっかり血抜き。
血抜きしたサワラを筒状の桶に入れ心臓がとまったあとに、サワラの魚体が傷つかないように、丁寧に箱のなかに入れます。このようなスピーディな処理を施すことで、とれたての鮮度を保つことができるのです。
「釣れてほっとしたよ。今日は緊張するねえ」と安堵のようす。このあともう一尾、3kgアップの大きなサワラが釣れ、昼頃まで漁を行い港へ。大澤さんの手によって大切に扱われたサワラは、御前崎の市場へと運ばれていきます。
「サワラはねぇ、皮目の部分が一番のうまいところだよ」
大澤さんは料理が趣味で、家族のために夕食もよく作るのだそう。今回なんと、大澤さんの手作り「サワラの塩辛」をお土産にいただきました。東京へ戻ってから魚ポチバイヤーたち食べて大好評。魚を知り尽くした漁師さんの自家製珍味は、たいへん価値ある一品です。
大澤さんは水温16度くらいの海で釣るサワラが脂がのっておいしい、といいます。季節でいうと12~1月くらい。サワラの本格的な旬が、ますますこれからはじまります。魚ポチでも水揚げのあった日は、南駿河湾のサワラを掲載中。ぜひご覧ください!